こんばんは。今回はバスの運転士不足について書いていこうと思います。
現在、日本社会で大きな社会問題となっている人手不足ですが、その中でもインフラ関係の人手不足は生活面への影響がはっきりと出ます。
11月8日の夜の記事です。https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181108-00010011-asahibcv-l26
ニュースでも取り上げられていましたが、京阪バスが人手不足や整備士不足などの原因で来年度で京都市バスの委託事業から撤退すると発表しました。京阪という大手の会社でも人手不足の影響は避けられないようです。
京都市内のバスは外国人観光客の増加によって乗客は増えているものの反面、混雑が常態化するなどの課題に直面しています。バスの運行を支える運転士や整備士が不足している状況では課題の改善も難しいと言えるでしょう。
記事では京都市バスは乗客の減少によって赤字経営が続いていたために民間委託や人員削減に踏み切った経緯があり、運転士もほぼ半分に削減し、整備士も大幅に削減してきました。
さらには給与の引き下げも行うなど徹底的な人件費削減をしてきました。
黒字エリアを直営で運営し、赤字エリアを民間企業に委託することで経営を立て直していましたが京阪バスの撤退によって委託制度そのものを見直す必要があります。
さて、バスの運転士が不足している原因は何でしょうか?
バスの運転士が不足する原因は単純にバス運転士の志望者が少ない事です。バス運転士のイメージというと「体力的にキツイ」「拘束時間が長く休憩が取れない」等の悪いイメージが強くあることも志望者が少ないことに影響していると考えられます。
バス運転士の志望者が少ない根本的な原因は給料面と労働環境面にあります。
バス運転士の給料は2002年の規制緩和を受けて以前よりは下がっています。中には給料が上がっている会社もあるかもしれませんが、全体でみれば下がっていると言えます。
こちらのサイトにバス運転士の給料と日本の平均給料を比較したグラフがあります。
賃金は20代半ばまでは日本の平均給料より高いですが、年齢の上昇による増加が少ないために30代以上になると大きく差が付きはじめます。
バスの運転士でも民間か公営かによって大きく変わりますし、観光バスや夜行バス・高速バスによっても差はあります。また、地域によっても差があります。
基本的には民間よりも公営の方が給料は高く、待遇も良いと考えられるでしょう。公営の場合は公務員となるので安定性も高く、働き手としてはいい立場にあると言えます。
給料面の問題がバスの志望者を減らしている原因の1つであることは事実です。年齢が上がっても給料はあまり上がらないために若い世代が敬遠しやすい環境であると言えます。
給料面と同じく労働環境面も大きな問題です。
バス運転士は2日で1勤務となっていることが多く、拘束時間が長いので体力的にしんどいです。会社によって勤務スタイルは異なりますが、2日間にわたる勤務は夜行バスや高速バスを中心に行われており、これら以外でも行われている会社もあります。
また、通常の勤務以外にも時間外労働が常態化している環境にあるために労働環境は良いとは言えない部分があります。
近年はコンプライアンスが重視される社会となり、厳しい労働時間管理の中で運行を管理しないといけません。ただでさえ運転士が足りないのに労働基準法の遵守が求められるために1回の労働時間を増やすことで対応するしかない状況にあると言えます。
コンプライアンス強化による労働管理の中でバス会社は安全対策や過剰とも言えるCSに追われていることもあり、現場にその負担が掛かっています。
最近ではバスの事故が大きく取り上げられるようになりました。2012年の関越自動車道で高速バスが防音壁に衝突した事故や2016年の軽井沢のスキーバス事故が起きた事でバス会社に向けられる安全への視線はより厳しいものとなっています。
人手不足とコンプライアンス強化による労働環境への厳しい視線によってバス会社は大きな壁に立ちはだかっています。人手不足を解消するためには賃金のアップと労働環境の改善が絶対条件です。
賃金アップと労働環境の改善がされない限り、バス会社はいずれ終焉を迎えます。そうなればバスはダイヤ通り運行できなくなり、利用者の移動手段が無くなってしまいます。
特に地方で車を持たない人にとっては致命的な問題であり、移動手段が無くなり市民生活に大きな影響を与えます。買い物や病院にも行けなくなってしまう可能性も出てきます。
高齢者の車の事故が多発している環境で免許の返納を促進しようと思うとバスの存在は欠かせません。今後、高齢化が進む中で車を運転する高齢者が増えると事故も増えると考えられます。
バス運転士の人手不足は単にダイヤが維持できなくなり、利用者の移動手段が無くなるだけでなく、それに伴い生活が維持できなくなること・高齢者が車を運転せざるを得ない環境に繋がります。
高齢者全員が車の運転に問題があるわけではないですが、認知症や衰えによって事故が多発している現状を考えると車の運転のリスクは低くありません。
バス会社だけでは労働環境を改善することは難しい問題なので国もサポートをするべきです。元を辿れば国の政策がバス運転士の労働環境の悪化を招いた原因です。
バスは生活していくために欠かせない存在で、少子高齢化が進む日本では無くしてはいけません。