5年に一度行われる欧州議会選挙ですがEU内で結果が出ました。今回の欧州議会選挙の争点となるのは移民だったと言えます。
各地で反移民を掲げる政党が躍進するなかで今後のEUの存続に影響する選挙だったと思います。今回はEUの盟主とも言えるドイツの選挙結果に焦点を当てて考えたいと思います。
ドイツでは反移民を掲げるAfDが躍進し、メルケル与党の支持率低下が明らかになりました。今後の政権維持やEUとの関係はどうなるのでしょうか?
この記事では以下の3点について考えてみました。
・ドイツ欧州議会選挙でAfDの躍進の背景
・メルケル政権はどうなるか?
・今後のEUはどうなる?
ドイツ欧州議会選挙の背景にAfDの躍進
ドイツではメルケル与党が低迷する一方で反移民を掲げるAfDの躍進がありました。昨年の選挙でも脅威となっていたAfDが勢力を拡大するとなるとEUにとっても脅威になりそうです。
フランスではマリーヌ・ル・ペン氏が率いる反移民を掲げる国民連合がマクロン大統領に勝利し、第一党になりました。EUの中心国でもあるフランスで反移民を掲げる国民連合が勝利するというEU統合の道に暗雲が立ち込める結果となっています。
フランスで国民連合がマクロン政権側に勝利したのと同じようにEUに対して疑問を抱いている人がドイツでも増えているのが分かります。
昨年の選挙と今回の欧州議会選挙でAfDが躍進した理由は2つ存在します。
2015年夏の欧州難民危機での対応
ドイツは2015年夏にメルケル首相が移民・難民を受け入れると発言したことで欧州難民危機を引き起こした原因の国でもあります。当初は人道的支援として賞賛されましたが、すぐに現実を見せつけられることになりました。
というのもドイツが受け入れると発言したことで移民・難民が一斉にドイツを目指して進むことになりました。
その結果、ドイツを目指す途中で通過する国では衝突が起きるなどの混乱が発生しました。ドイツでも受け入れキャパを超えたことで保護施設が不足したり、対応するスタッフが足りないと言った問題が発生しました。
移民・難民を受け入れる際に制限を掛けなかったことが混乱を招いたと批判もあります。
反移民感情が広がるのはドイツでも例外ではありませんでした。人道的支援と言う理想のような政策でしたが、結果は国内の混乱とドイツ国民の安全を脅かしただけでした。
ドイツ政府やメディアへの不信
移民・難民政策の失敗によってドイツは大混乱に陥りました。治安が悪化した結果、ドイツ国民の安全が脅かされる事態となり2015年の年末にはケルンで集団性暴行事件が起きるなど移民・難民が関わる犯罪行為もありました。
特にケルン集団性暴行事件は当初、隠蔽しようとすぐには報道しなかったことも波紋を呼びました。報道があったのは事件が起きてから5日後であり、初期対応の悪さを露呈することにもなりました。
事件後にはデモが行われ、メルケル政権の移民受け入れに対して怒りの声を上げるなどドイツ国民とメルケル政権の対立が明らかになっていました。
自国民が危険な目に遭ったにもかかわらず、適切な対応をしなかったことでメディアや警察・政府に対して不満が増幅したと言える事件でもあります。
ケルン集団性暴行事件はメルケル政権に対して不満が一気に高まることになったきっかけでもあるでしょう。
反移民を掲げるAfDの勢力拡大
移民政策を続けるメルケル政権に不満が高まる一方で、反移民を掲げるAfD(ドイツのための選択肢)が勢力を拡大していきました。
欧州難民危機後の2015年11月には国家とドイツ人の安全を最優先にすると決めています。また、移民・難民の受け入れに対して上限を決めるように政府に求めるなど現実的な対応策を提示しています。
フランスの国民連合と同じようにAfDも極右政党と欧州メディアは批判しますが政策は現実的であると言えます。全部がそうではありませんが、ヨーロッパが直面している移民問題に対してはしっかりとした対策案を提示しています。
ドイツ欧州議会選挙結果でメルケル政権はどうなる?
ドイツの欧州議会選挙の結果は大方予想通りだったかなと思います。メルケル首相のキリスト民主同盟(CDU)は得票率が前回よりも7パーセント下がり28%になりました。
また、CDUと連立を組む社会民主党(SPD)も11.5%前回より得票率が下がり15.5%になるなどメルケル政権側は大敗を喫したと言っても過言ではありません。
前回の2/3ほどに得票率が下がったことはメルケル政権を支持する人が減ったということです。一方で緑の党は支持を増やすなど親EU派の中でも明暗が分かれることになりました。
結果としては親EU派の中で票が動いているとも考えれます。親EU派の中で票が細分化されることで調整が難しくなり、結束への影響も小さくはありません。
AfDは支持を拡大
予想よりは得票率は高くなかったですが、それでも前回よりも議席を増やしたことは大きな収穫と言えるでしょう。AfDの主張が支持を集めていることには変わりありません。
欧州難民危機以降、移民に対するドイツ国民の感情はマイナスイメージが強いので今後も支持を増やしていくことが予想できます。AfDとしては親EU派が結束する前に勢力を更に拡大したいと考えているでしょう。
昨年のドイツ州議会選挙ではメルケル政権の本拠地とも言えるバイエルン州で議席を獲得するなど勢いはあります。
メルケル政権崩壊の可能性も
昨年のドイツ州議会選挙でも多くの議席を失い、本拠地とも言えるバイエルン州で反移民を掲げるAfDに議席を取られたことは地盤地域でも反移民を支持する人が増えているということです。
今のメルケル政権は往年の強さはありません。欧州難民危機で流入してくる移民・難民に対して有効な政策を打てなかったことや治安の悪化など国民の安全を守れなくなったことが支持を失うことになりました。
EUの盟主でもあるドイツですが、イギリスのEU離脱が決まるなど前途多難の状態です。
今回の選挙でも得票率は下がり、更に衰退してしまったことを証明することになってしまいました。EUでの指導力の低下だけでなく、ドイツ国内でも支持率の低下による政権運営の不安定さが増すことになってしまいました。
欧州議会選挙が終了しましたが、今後メルケル政権はどうなるのでしょうか?
ドイツ欧州議会選挙の結果で今後EUはどうなるのか
フランスでは反移民を掲げる国民連合がEU統合を目指すマクロン大統領に勝利し、ドイツでもメルケル政権側が大きく後退するなどEUの中心国とも言える2国でEU推進派が苦戦すると言う結果でした。
フランスでは国民連合が第一党になり、ドイツでもAfDが着実に勢力を伸ばすなど反EU、反移民を掲げる政党の躍進が目立ちます。ハンガリーやイタリアでは反移民を掲げる政党が勝利するなどEUへの反対勢力が着実に力を付けています。
ベルギーやスペインでも反移民を掲げる政党が大きく議席を伸ばすなど西欧でも反移民感情の広がりが見られます。
今回の選挙では予想ほど右派ポピュリストは伸びなかったようですが、EUに対して反対する人が多くなっていることは明白になりました。
今後EUはこれまでの伝統的なスタイルを維持することは難しいでしょう。時代が変われば環境も変わるのでその時に応じた方針を取ることが求められます。
まさに、今EUは方針の転換を迫られていると考えることが出来ます。
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