5年に一度行われる欧州議会選挙ですがEU内で結果が出ました。今回の欧州議会選挙の争点となるのは移民だったと言えます。
各地で反移民を掲げる政党が躍進するなかで今後のEUの存続に影響する選挙だったと思います。今回はフランスの欧州議会選挙結果に焦点を当てて、考えていきたいと思います。
この記事では以下の2点について考えてみました。
・国民連合が勝利した理由
・今後EUはどうなるのか?
フランスの欧州議会選挙で国民連合が勝利した理由は一体何なのでしょうか?また、国民連合の勝利によって今後EUはどうなるのでしょうか?
フランスの欧州議会選挙
EUの中心国とも言えるフランスではマクロン大統領と国民連合のマリーヌ・ル・ペン氏の一騎打ちが展開されることになりました。フランスでEU統合を目指す現役大統領と反移民を掲げる国民連合の戦いと言う正反対の主張がぶつかり合うことになりました。
フランスで今後のEUの存続を掛けると言っても過言ではない決戦が行われることになりました。EU推進派vs反対派というような構造で現在のヨーロッパの混乱を象徴するような選挙戦でした。
フランスはドイツに次いで欧州議会での議席数が多いのでフランスの結果はEUにとっても、反移民を掲げる各国の政党にとっても自分たちの国と同じぐらいに重要なのです。
反移民を掲げる政党が各地で躍進する中でフランスはEU推進派にとって絶対に落とせない選挙地でもあります。EU第2の国で反移民を掲げる国民連合が勝てば、EUの統合は彼方へと消えてしまいかねません。
直近の世論調査では
決戦前直前の世論調査では国民連合のマリーヌ・ル・ペン氏が支持率でわずかにマクロン大統領を上回っているという結果がありました。決戦前とは言え、マクロン大統領からすれば相当な焦りがあったでしょう。
大統領自ら選挙戦に参加して支持を呼び掛けるなど動いていたにもかかわらず、支持率で負けているという結果でした。反面、ル・ペン氏からすればリードを奪っているということで少し心の負担が軽くなったことでしょう。
リベンジマッチ
フランスでの欧州議会選挙はマリーヌ・ル・ペン氏にとっては2017年のフランス大統領選のリベンジマッチとも言える選挙戦です。前回の選挙戦ではフランス初の女性大統領誕生が掛かっていましたが、マクロン大統領に決選投票で敗北しました。
2017年のフランス大統領選ではダブルスコアの差で敗北したマリーヌ・ル・ペン氏にとっては国民連合としての勝負だけでなく、自分自身にとってもマクロン大統領へのリベンジマッチなのです。
フランスの欧州議会選挙で国民連合が勝利した理由
マクロン大統領と国民連合のマリーヌ・ル・ペン氏の一騎打ちの結果は
国民連合のマリーヌ・ル・ペン氏が勝利を掴みました。
激戦が予想されていたフランスの欧州議会選挙ですが、決戦前の世論調査の結果通りに国民連合が勝利しました。国民連合の勝利であると同時にマリーヌ・ル・ペン氏にとって2017年のフランス大統領選のリベンジに成功した決戦でした。
フランスで反移民を掲げる国民連合が勝利したことでEUの存続が危うくなってきました。選挙の結果、フランス国民が反移民主張を支持したことを証明することになりました。
大統領自ら選挙戦に参加したにもかかわらず敗北したことはフランス国内でも反移民感情の広がりを止めることは出来なかったということです。
結果として、マクロン大統領の統率力は弱くなっていることが明らかになりました。
フランス国民が移民問題の解決を望んでいることが分かった以上、EUよりもフランスを優先してほしいと思っているのでしょう。移民問題の解決に取り組まない限り、フランス国民の支持を得ることは出来なくなったことを意味しています。
国民連合が勝利したことでマクロン政権がすぐに崩壊するわけではありませんが、今後の政権運営には大きな支障となります。
フランスの欧州議会選挙で国民連合が勝利した理由を考えると実にシンプルです。国民連合が勝利した理由は2つ考えられます。
国民連合の勝利の理由は2つ
国民連合が勝利した理由はテロの脅威に対する現実的な対応策と冷静な選挙戦略の2つです。
国民連合はEUの移民政策に合わせるのではなく、国家レベル(フランス独自)で移民や難民を制御できる態勢を整えることを訴えていました。2015年の欧州難民危機を見れば、国ごとに対応できるようにするのが一番現実的です。
欧州難民危機によってEUは移民・難民を制御する力がないことが明らかになりました。EUと言う組織が押し寄せる大量の移民・難民に対して有効な策を出せなかった以上、自国で防御せざるを得ないことを証明してしまいました。
また、マクロン大統領がやや感情的になっていたのに対して冷静な姿勢を貫いたマリーヌ・ル・ペン氏の差もあったのではないかと言えます。
国民連合を「欧州を壊す政党」と断じ、「国民連合が第1党にならないよう、あらゆる精力を注ぐ」とまで宣言。選挙ポスターに自分の顔を刷り、メディアのインタビューに積極的に応じた。https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190527-00000026-asahi-int&pos=3
今日の朝日新聞の記事でマクロン大統領の発言が紹介されていますが、やけくそになっている感じが読み取れます。
「欧州を壊す政党」と国民連合を凶弾していますが、欧州難民危機でヨーロッパを分断したのは紛れもなくEUの対応の悪さが原因であるとカウンターが飛んでくるような発言です。
欧州が直面している移民問題に対して現実的な政策を提示したこと・選挙戦でも冷静に戦い抜いたことが国民連合の勝利の要因と言えるでしょう。
欧州議会選挙でマクロン大統領が敗北したことで政権運営にも陰りが出てきました。EUの統合を目指して挑んだ選挙での結果はマクロン大統領にとって受け入れがたいものです。
フランスの国民連合勝利で今後EUはどうなる?
欧州議会選挙で国民連合に敗北したことでフランスのEUでの指導力は失われたと言ってもいいでしょう。EU統合を進めるマクロン大統領にフランス国民がNOを突き付けたことになった以上、これまで通りにはいかなくなります。
国民連合はEUの基本条約の大幅な見直しを主張しており、EU離脱の可能性も否定できません。イギリスに続きフランスも離脱となればEUは崩壊するでしょう。
EUはドイツ・フランス・イギリスが出資額が大きいので影響力を持っていましたがイギリスのEU離脱が国民投票で決まったことに続き、フランスでも反移民を主張する国民連合が勝利したことでこれまでのEUを維持することが困難になりました。
ドイツでも反移民を掲げるAfDの躍進がありました。
2015年の欧州難民危機がもたらしたテロの脅威や移民・難民による犯罪行為によってフランスでも反移民感情が広がっていることが明らかとなった以上、EUの移民政策は今後、受け入れられないです。
今回の選挙で国民連合はフランス国民から支持を受けたことで勢力をさらに拡大していくでしょう。次の大統領選で国民連合が勝利すればフランスのEU離脱も現実路線となるでしょう。
フランスもイギリスと同じようにEU離脱の是非を国民投票で問う日もそう遠くないかもしれませんね。
ドイツと並びEUの中心国であるフランスで反EU色の濃い国民連合が勢力を拡大すれば、今後のEU存続にも関わりそうです。
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