今回はイギリスがEU離脱することによるデメリットについて紹介したいと思います。
2016年の国民投票で僅差でEU離脱派が勝利したことは世界を驚かせましたが、EUを離脱することによってイギリスが失うものも大きいと報道でも取り上げられています。
最近の英国世論調査では1か月前に出来た新政党が2大政党の支持率よりも高いデータがありました。新政党が支持率トップになるほど2大政党は衰退していると考えられます。
この記事では以下の点についてまとめてみました。
・イギリスのEU離脱のデメリット
・グローバル化の課題
イギリスのEU離脱のデメリットは何か?
イギリスの離脱を巡っては反グローバル化への前進やポピュリズムの台頭、極右勢力の拡大などネガティブな言葉で表現されることも多いですが、その実態はどのようなものなのかを考えていきたいと思います。
イギリスのEU離脱に対してデメリットが大きすぎると反対する評論家やメディアは口を揃えていいますよね。EU離脱=愚かな選択と言わんばかりの報道をするメディアも存在しますが、具体的にどのようなデメリットがあるのかまとめてみました。
イギリス製品に関税がかかる
1つめのデメリットとしてはイギリス製品に関税がかかるようになることです。EUは加盟国間で人・モノ・資本の自由な移動が保証されています。
つまりEU内では物に対して関税がないのです。関税は自国の産業を守るために他国製品に対して税を掛けるものですが、その概念がEUにはありません。
関税がないということは販売する側からすれば希望額で商売が出来るのでビジネス面では非常に有難いことです。
しかし、EUを離脱してしまうとEUの関税フリーパスの恩恵を受けることは出来ません。つまり、これまで通りのビジネスが出来なくなります。
これまで1個100円で売れていた商品が関税がかかり150円になったり、200円になったりするようになるのでイギリス製品がEU内で売れなくなることが予想されます。同じ商品なら安い方を取る人が圧倒的に多いですよね。
イギリス製品に関税が掛かることでイギリス製品が売れなくなり、経済が悪化することが懸念されます。経済の悪化に伴い雇用も減るので社会全体が衰退することが予想が付きます。
ドーバー海峡問題
2つめの問題としてフランスとの間にあるドーバー海峡を巡る問題です。ドーバー海峡の海底にはイギリスとヨーロッパ本土を繋ぐユーロトンネルがあります。
ユーロトンネルは電車が通っているのですが、イギリスがEUを離脱した場合どうなるか分かりますよね?
EU内は国境はフリーパスですが、EU加盟国以外はそうではありません。
つまり、EU加盟国からイギリスに電車で行くためにはフリーパスでは行けなくなるので電車そのものがイギリスに入れなくなる可能性があります。
2019年現在はユーロスターとTGVの1系統がイギリスのロンドンに乗り入れており、イギリスがEUを離脱した場合にどうなるかが疑問です。
ユーロトンネルは列車に車を乗せて移動することも出来ますが、それも出来なくなる可能性があります。インフラ系で影響が出るのはEU離脱のデメリットとして大きいです。
ポンドの信用低下
3つめは通貨ポンドの信用低下です。
イギリスがEUを離脱することで通貨のポンドの信用が落ちて、他国からの信用が無くなってしまう可能性があります。
国家間で政策の取り決めをする際にその国の通貨の信用がないと影響が出ます。通貨はその国の信用度を示すデータのような一面もあります。
EU離脱が国民投票で決まったにも関わらず、イギリス国内ではEU残留を主張する勢力が強くなるなど国民投票の意味は何だったのかと言う状態です。他国からすれば、イギリスを信用することは難しいです。
ポンドの信用が落ち、売りが多くなるとポンド高になり輸出に大きな影響を与えます。ポンド高の場合は輸出製品が高くなってしまうので海外で苦戦することが予想されます。
ポンドの信用低下⇒ポンド高⇒輸出の不振⇒経済悪化
上のような負のスパイラルに陥ってしまう可能性があります。
イギリスのEU離脱に見るグローバル化の課題
グローバル化とは社会的・経済的なことが国家や地域を超えて地球規模レベルまで拡大し、変化していくものです。
15世紀の大航海時代にヨーロッパの国が海外に進出し、植民地を世界各地に作り経済活動を始めたことに遡ります。産業革命・資本主義の確立と共にグローバル化は進んできました。
第2次世界大戦後、世界は資本主義の西側諸国と社会主義の東側諸国に分かれましたが、1989年に冷戦が終結し、翌年にソ連が崩壊したことで資本主義が世界に広がりました。
現代社会で何かと「グローバル化」というワードを耳にする機会が多いですよね。
「グローバルな視点で」「グローバル化に対応できる人材の育成」など大学の講義で聞いたことがある人も多いでしょう。日本だけでなく海外でも活躍できるようにより広い視野と深い教養を身に付けることが大事だと言われます。
私は大学生の途中まではグローバル化のいい部分しか見えていなかったと思います。
大学3年生の後半あたりからグローバル化のデメリットの存在に気づき、必ずしもグローバル化が良い方向に進むとは限らないと思いました。
産業の空洞化
1つめは産業の空洞化です。技術の進歩と国際情勢の変化に伴ってグローバル化は拡大してきました。グローバル化によって海外進出が進むのですが、この行動が産業の空洞化を生み出す原因にもなってしまいます。
商品を製造するにあたり、最適の場所を選ぶことが出来るようになったので製造に適した環境と安い労働力で大量に生産することが出来るようになりました。
製品の製造のために工場を作る際に海外の方が安く製造できると分かれば、海外に工場を作って逆輸入するようになるので国内の企業が海外に逃げていくような形になります。
国内に製造拠点を置く必要がなくなるので国内の生産量は下がります。その結果、産業自体が衰退してしまうというのが産業の空洞化です。
日本でも民主党政権時代の超円高の際は日本企業が海外に工場を作って拠点にするケースが多く発生いるので国家的にはグローバル化による国内産業の空洞化が一番怖いと言っても過言ではないでしょう。
雇用の減少に伴う失業率の上昇
産業の空洞化と繋がる問題ですが、工場が海外に作られるということは国内で雇用されたかもしれない人が雇用されずに、海外の安い労働力の人が雇用されるということです。
つまり、国内の雇用が失われ失業する人が増えるということです。
国内から精鋭を海外に連れていき、現地で安い賃金で人を雇用して向上を稼働させることで国内で工場を稼働させるよりも大幅にコストを削減できます。
海外の工場を作り、安い賃金で雇用することで売上&利益増加を狙うのが企業の狙いです。
グローバル化は経済の発展と衰退が表裏一体になっていると言えます。
企業が海外に工場を作り、安い労働力を手に入れたとしてもその場所で受け入れられるとは限りません。進出先が移民の多い地域の場合、地元の人が雇用競争に勝てないケースも多くあります。
イギリスのEU離脱賛成派の主張で移民に雇用を奪われているという声がありました。地元で仕事探しをしても単価の高い地元の人よりも安い移民が多く雇用され、地元の人が職に在りつくことが出来ないという事例が起きています。
海外に進出したからと言って現地の人の雇用が安定するとは限りません。国内の雇用が減るだけでなく、進出先の海外でも賃金の安い人に職を奪われ、困窮する人が少なくありません。
企業が海外進出しても、進出先の地元の人の失業率が改善するとは限らないのです。
ポピュリズムの台頭
最近、EU加盟国内で反移民を掲げる政党が躍進していて、この現象に対し極右勢力やポピュリズムの台頭と言われるようになりました。
ポピュリズムとは大衆の不安や願望・怒りなどを利用して既存の体制や知識人に対して対決姿勢を示す政治思想です。現在はマイナスの意味で使われることが多いような気がします。
ポピュリズムの事例として出されるのは20世紀のイタリアのファシズム、ドイツのナチズムなど戦争の原因となったと考えられている思想に対してです。
2015年の欧州難民危機以降、EU加盟国内では反移民感情が広がりを見せています。治安の悪化に伴う犯罪やテロの増加で移民・難民に対していい印象を持つことは難しい環境であると言えます。
移民・難民が容疑者の中に多くいたドイツのケルン集団性暴行事件が報道されずに隠蔽されたことから現在の政治体制に対して、移民・難民に対して不満を持つ人は多く存在します。
EUが押し寄せる移民・難民に対して何も有効な手を打てなかったことで反移民感情が広がったと考えられるでしょう。決して愚かな考え方ではないはずです。
イギリスでもブレグジット党と言う新しい政党が登場し支持を広げていますが、メディア的にはポピュリズムと言われる勢力でしょう。
まとめ
イギリスのEU離脱のデメリットをまとめましたが、グローバル化の問題点と密接な関係があると考えられると思います。
EU離脱で得るメリットもありますが、デメリットの方が大きく報じられます。
グローバル化の問題点が2015年の欧州難民危機によって表面化し、反移民感情を強くしたことは否定できないでしょう。テロの増加によって身の危険が脅かされることになっているので反移民感情になるのは無理もありません。
イギリスからすればドイツの判断でEU全体を混乱に陥れたようなものであると考えていると思います。EUにいる限り、テロの脅威はどんどん増すと考えているのでしょう。
イギリスのEU離脱のデメリットは大きいですが、イギリス以外の国が離脱する時も同じことが言えるのです。
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