今回はイギリスがEUを離脱することで得られるメリットは何か書いていこうと思います。
2016年の国民投票でイギリスのEU離脱が決まりましたが、ここにきてEU離脱に反対する勢力が強くなってきているように思えます。当初の離脱交渉期間は先延ばしされ、2019年の10月末が暫定的な期限となりました。
EU離脱が間近に迫ってきた時に国民投票のやり直しや残留を求める声が多く上がるなど、2016年の国民投票は何のために行われたのか分からなくなってきています。
この記事では以下の2点についてまとめました。
・イギリスのEU離脱のメリット
・イギリスのEU離脱が世界に与える影響
イギリスのEU離脱のメリットと世界に与える影響をそれぞれ考えていきます。
イギリスのEU離脱のメリットは何?
報道でもEU離脱のメリットが取り上げられないのでイギリスの選択が愚かな決断をしたように思わされそうになりますが、決してメリットがないわけではありません。
マスコミやEUにとってはあまり知られたくない真実があるからこそ報道ではあまり取り上げていないのです。そのメリットとはEUという大きな組織を内側から連鎖的に崩壊させるリスクがあるのです。
イギリスがEU離脱で得るメリットは3つあります。それぞれ分けて考えてみました。
イギリス社会への投資が加速できる
1つめのメリットとしてはイギリス社会への投資が加速するということです。投資が加速する背景にはEUのあるルールに縛られなくなるからです。
そのルールとはEU加盟国に課されているEUへの出資です。EUは加盟国同士が費用を出資して成立している組織です。その出資額と言うのは国ごとに違い、裕福な国(経済力が強い国)ほど出資額は多くなっています。
イギリスの場合はドイツ、フランスに次いで3番目に多く出資しています。こちらのみずほ総合研究所のレポートに分かりやすく書かれています。
単位は10億ユーロなので70億ユーロぐらいでしょうか?2014年にイギリスがEU運営の為に出資している額がこれだけあります。
70億ユーロを現在のレート(5/14)に当てはめると日本円で約8625億円です。これだけのお金があればかなりの政策を打ち出せるのは明白ですよね。
EUを離脱すれば、約8625億円が浮くわけですからこのお金を国内政策に回すことが出来るのです。EUの恩恵を受けれないなら離脱して国内の強化に努めた方がいい選択であるとEU離脱に賛成者は考えたのでしょう。
移民問題でEUの制約を受けなくなる!
2つめは移民問題でEUの制約を受けなくなることです。
移民問題もEU離脱によってイギリス単独が対応できるのも大きなメリットです。2015年の欧州難民危機以降、ヨーロッパには中東から多くの移民・難民が押し寄せるようになりました。
イギリスはヨーロッパ本土から離れているとはいえ、ユーロトンネルで繋がっています。EU加盟国は国境をフリーパスで通ることが出来るので人の出入りが自由です。
ドイツのメルケル首相が移民を受け入れると発言した結果、ドイツをはじめドイツに向かう道中で移民・難民が大量に通過した国は大混乱に陥りました。治安の悪化に伴う犯罪の増加で安全面の確保に対する脅威となりました。
EUは人権保護に積極的で2015年の欧州難民危機の際も人道的支援としてドイツは移民・難民を大量に受け入れました。
しかし、ドイツの独断だったのか主に南ヨーロッパ地域で混乱を招き、人道的支援のあり方に対する疑問を持つ人も多く出たと思います。
ハンガリー・クロアチアでは自国民保護のために国境にフェンスを作りましたが、ドイツをはじめEUはこれを非難するなど人道的支援の負の面が浮き彫りになりました。
例え自国民の安全を脅かすようなことであってもEUに所属している以上はEUの決定に逆らうことが出来ないというのが2015年の欧州難民危機で明らかとなりました。
しかし、EU離脱をすれば移民問題でEUに付き合う必要はありません。移民を受け入れないと決断してドーバー海峡を封鎖してもEUの制約は関係ありません。
イギリス国内でのテロリスクの軽減
2015年の欧州難民危機以降、ヨーロッパでは治安が悪化しテロ行為とも言える事件が起きています。同年の8月のタリス銃乱射事件や11月にパリで起きた同時多発テロ事件などイスラーム過激派組織によるテロ行為が起きました。
ドイツでも2015年末~2016年年始にかけてケルンで集団性暴行事件が起き、犯行に関わった半数以上が難民であるなど移民の受け入れに対するリスクが現実的に現れました。
ドイツ警察やメディアは事件を隠蔽しようとしたために猛批判を浴びることになりました。このような国内の治安が悪化するリスクはEUに加盟している限り、付きまといます。
イギリスからすれば、勝手な判断で巻き沿いを受けるようなことは嫌です。ドイツやフランスの事例を見れば、自分たちで移民政策を進めたいと思うのは当然です。
イギリス国内の治安を守るために単独で移民制限を実施するならEU離脱しかないでしょう。EUにいる以上は単独の判断は出来ません。
自国に入る人をチェックできるようになれば、テロの脅威は軽減されます。国境フリーパスを失くせば、危険な人物は入国させにくくなるので治安維持と言う点からすればテロリスクの激減が狙えます。
イギリスのEU離脱で世界への影響は?
イギリスのEU離脱にはメリットだけでなくデメリットもあります。
イギリスのEU離脱に伴うデメリットはEUだけでなく世界にも影響を及ぼします。EUを抜けるわけですからEUはもちろんのこと、イギリスと関係がある国全てが対象です。
世界に及ぼす影響は2つあります。
ポンドとユーロの信用低下
イギリスのEU離脱は世界経済への影響力は大きいのは事実です。イギリスの通貨であるポンドやEUの共通通貨であるユーロは信用性が低下しているのは確実です。
EU離脱がどう動くかは不明ですが、現状を見ているとユーロとポンドを買いたいと思う投資家はあまりいないでしょう。動きが読めない以上、持つのは危険です。
ポンドの信用が低下するということはイギリスに進出している外国企業が撤退していく可能性が上がることを意味します。外国企業からすれば不安定な情勢のイギリスに留まるのは危険ですし、ダメージを最小限に抑えたいと考えます。
反移民感情の広がりとEU加盟国の連鎖離脱の可能性
イギリスのEU離脱はEUの組織的な問題が大きな決め手になったと言えますが、何もイギリスだけが思っている問題ではないはずです。
EUへの出資額が高いフランスやスウェーデンやオランダなどへイギリスのEU離脱の余波が及ぶ恐れがあります。2015年の欧州難民危機以降、EUの盟主とも言えるドイツの移民・難民受け入れ政策に対して不満を持った国は多いでしょう。
他のEU加盟国からすれば、ドイツの主張があのような危機を招いたようにも感じられます。
EUは加盟国から出資を集めて予算を組んでいますが、EUへの出資が国の財政を圧迫していると批判する人もいます。出資に見合う恩恵がなければそう思うのは当然のことです。
欧州難民危機に対して右往左往するだけだったEUの対応を見れば、不満を持たない方が凄いです。何もできずに対応を押し付けるような態度を取ったのですから被害を被った国からすればEUの存在意味は何なのかとなります。
現にイタリアでは反EU・反移民を掲げる政権が昨年の6月に誕生し、EU加盟国内で初の反移民を掲げる政権となりました。
他の国でも反移民を掲げる政党は躍進しています。ドイツやフランス・オランダでも反移民を掲げる政党が勢力を拡大しており、EUへの出資額が多い国で反移民感情が広がっているという状況です。
移民に寛容な国として知られたいたスウェーデンでも反移民を掲げる政党が昨年の総選挙で大幅に議席を増やすなどEUの移民政策に対して反対する人々が国レベルで増えている状況です。
イギリスとEUはどうなるのか
イギリスのEU離脱ばかりが注目されていますが、フランスやドイツ・オランダなどEUへの出資が多い国でも反移民を主張する勢力が強くなっているのはEUにとって脅威です。
EUは今、内部瓦解という危機にさらされています。移民問題をはじめ、EU加盟国間の格差やルールなど内側の部分を見直さないといけない状況です。
イギリスがどうなるかは不明ですが、第2のイギリスを生み出さないためにはEUが抱える内側の問題を解決しないと止めることは出来ないでしょう。
EUの存在意義が問われているのが現在の状況です。イギリスでは2大政党が1か月前に誕生した新政党に支持率で惨敗しているという調査結果もありました。
イギリス国内はどうなるか予想がつかないですね。
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